長野県の最北に位置する飯山市。市内でも最北にある温井(ぬくい)区は、山や森に囲まれたのどかな集落。標高は540メートルほどで、夏はさわやかな風が吹き、高原の気候を生かした農業が行われています。
大きくて甘く、独特のシャキッとした食感がおいしいと評判のスイカをはじめ、路地もののアスパラガス栽培や、稲作が中心です。
飯山市の地域おこし協力隊募集制度が刷新されたのを機に、温井区では、集落の農業を次世代につなぐ役割を担ってくださる、地域おこし協力隊を募集します。
温井で暮らし、スイカ農家やアスパラ農家から、この地での実践的な農作業を教えてもらいながら、村の農地を受け継いでくださる方とのご縁を求めています。
新規就農を目指している方、すでに農業を営んでいて、環境のよい土地をお探しの方など大歓迎です!
住人によりブランド化された温井のスイカ
温井で栽培しているスイカは「紅大(こうだい)」という品種。もともと大きな実がなる品種ではありますが、村の人によると「温井のスイカは、なんでかとても大きく育ってしまう!」そうで、最大級のものとなると、20キロ弱ほどの重さがあります。
8月のお盆前に、温井の直売所で開催されるスイカフェスティバルは、2013年に始まりました。たくさんの人が訪れ、温井のスイカのおいしさが徐々に知れ渡り、一度に100個ものスイカを完売するほどの人気に。
コロナ禍の影響で、2020年に会場を市内の農産物直売店「いいやまぶなの駅」に移すことになりましたが、「温井のスイカ生産者直売会」と名前を変え、温井のスイカフェスは続いています。
今年の8月11日、10時の販売開始前からお客様が行列を作ります。温井のスイカを食べてファンになり、市外から毎年買い求めに来る方もいらっしゃいます。用意した80個はあっという間に完売しました。
高齢化するスイカ生産者。温井の農業を、今のうちに次世代に
村の人たちの努力でブランド化された温井のスイカ。ところが、村のスイカ生産者は、最盛期の10人から、5人にまで減少してしまいました。
そして、大きなスイカの重さが、高齢の生産者にとって、手に負えなくなってきています。スイカ栽培歴50年以上という米持正範さんは、なんともうすぐ90歳。
スイカだけでなく、稲作やアスパラガス栽培についても同様に、高齢化により生産者が激減していますが、集落内にはすぐに後を継げる人がいません。
「この人がいなくなったら、温井の農業はもう終わりなのでは…」という、不安定な状況が続いてます。
少しでも早く、温井のスイカ栽培や農業を、高齢化していく農家から次世代に継承しなければ、という思いで、住人有志で活動する「温井村づくり委員会」は動き始めました。
「温井村づくり委員会」が、協力隊をサポートします!
今回、地域おこし協力隊を受け入れる窓口となるのは、温井の住人有志で活動する「温井村づくり委員会」です。2010年に結成され、現在は6名のメンバーで活動しています。
集落内に農産物の直売所を建てたり、廃寺となった村のお寺「大応寺」を、飲食営業も可能な集落カフェに改修するなどの場作りをして、集落の住人と外の人たちをつなぐ、さまざまな活動を長年続けています。
雪国の長い冬の間に、わら細工を作って商品化したり、雪の中でりんごを保管する「雪中りんご」プロジェクトも継続中。
この春からSNSで、村の情報発信もスタートしました。
温井のページ
飯山市の北の方の集落です。現在、戸数59件。有名な物は、甘くて美味しい『温井のスイカ』。区民全員で、頑張っています。何気ない日常を発信中。
Instagram / Facebook
地域おこし協力隊が、温井での暮らしにスムーズになじめるよう、温井村づくり委員会のメンバーがあれこれとサポートします!
「温井村づくり委員会」活動事例
ぬくい自由きままな仲間市 直売所
2011年に作られた村の直売所。週末を中心にオープンしていましたが、野菜を栽培する住人が減ってしまい休店中。協力隊にぜひ活用していただきたい施設です。
写真右は、2019年のスイカフェスティバルでにぎわう様子。
大応寺 ギャルリかざはな
かつては幼稚園としても利用されていたお寺を改修。小高い場所にあって眺めがよく、飲食営業も可能な集落カフェ兼レンタルスペースです。
わら細工のワークショップや、飯山市への移住希望者との交流会、婚活イベント、首都圏から訪れる大学生のセミナー会場など、さまざまに活用されています。
昨年、薪で焼くピザ窯を新設し、温井の採れたて野菜のピザが人気です!
わら細工づくり
雪国の長い冬の間の手仕事にと、委員会のメンバーを中心に発足した「わらの会」では、鶴や亀、雪ん子や猫つぐらなどのミニサイズのわら細工を作成して、使いやすいストラップに加工しています。飯山市優良土産品としても登録され、市内各所で販売されています。
雪中りんごプロジェクト
近隣の町で収穫されたりんごを預かり、1月中旬から3月下旬の間、温井の雪の中で保管・熟成したものが「雪中りんご」として販売されています。
飯山中央市場株式会社と協力して、2014年から始まり、2021年は1000ケースものりんごを雪の中で保管しました。
冬の暮らしと仕事 雪国ならではの農業スタイル
長野県飯山市は特別豪雪地帯にあり、市内には斑尾高原スキー場や戸狩温泉スキー場、近隣には、かつて冬季オリンピックが開催されたことでも有名な野沢温泉スキー場があり、冬は豊富な雪を求めて海外からやってくるスキーヤーで賑わい、スキー、スノーボードが好きで、飯山に移住してくる方もたくさんいらっしゃいます。
冬は雪で農作業ができないということは、冬の仕事はどうするのか?
飯山の農家さんの冬の過ごし方はそれぞれですが、仕事として代表的なものは、スキー場での仕事や道路の除雪作業になります。または、冬は働かずに休む、という方もいます。
農閑期が長いため、「半農半X(エックス)」という、農業が生活の基礎となり、Xの部分で農業以外の仕事をしたり、自分のやりたいことをする、という暮らしになります。
温井での住居について
一軒家の中古住宅を購入・賃貸する場合は、タイミングを待つ必要があります。温井には古民家が多数残っていますが、移住者に人気のある古民家は、空き家となってもすぐに売れてしまうこともあります。
賃貸住宅であれば、温井の公民館に併設されている、飯山市の「農村定住支援住宅」があるため、単身の方は、すぐに温井での暮らしをスタートすることができます。
間取りは1Kで、8畳和室、台所、風呂、トイレが備わり、家賃は月額10,000円。地域おこし協力隊が住む場合、活動費で家賃がまかなわれます(光熱水費等は別、入居には審査会有)。
飯山市は、移住者が中古住宅を購入する場合、最大80万円を補助しています。市内に転入した日から起算して1年以内、または転入して5年以内で、かつ賃貸住宅に居住している場合に補助対象となります。
飯山市移住支援住宅建設促進事業(新築・中古住宅購入・改修補助金)
新規就農希望者が学べる「飯山市農業研修センター」
飯山市では、新規就農者をサポートする制度が充実しています。新規で農業を始めたい方は「飯山市農業研修センター」にて、農業経験豊富な専門の指導員による、最長2年間の実践的な研修を受けることができます。
地域おこし協力隊で、新規就農を希望する方も同様に研修を受けることが可能です。ただし、研修期間中に支給される営農生活支援資金は、対象外となります。
受講対象者は、飯山市内で新たに農業経営を開始しようとする、研修時の年齢が50歳未満の方。受講開始は毎年4月からで、事前に面接が行われます。
2024年10月現在、3名がセンターで研修中。うち2名は、新規就農を目指す地域おこし協力隊員です。アスパラガスやズッキーニなど、就農後に栽培したい野菜を育てながら、日々学んでいます。
飯山市の新規就農者向け補助金・支援制度
飯山市新規就農総合支援事業
国の新規就農総合対策の内、経営発展支援事業または経営開始資金のいずれかの交付対象者に対して、市独自で50万円を上乗せして交付
個人就農支援交付金
独立・自営就農時の年齢が50歳未満の方に、農営に必要な経費の4分の3、年間最大120万円を最長3年間交付
定年帰農支援交付金
独立・自営就農時の年齢が50歳以上65歳以下の方に、営農に必要な経費の4分の3、年間最大50万円を最長3年間交付
その他詳しくは、こちらをご覧ください。
飯山市の就農支援
温井で活動する、地域おこし協力隊の活動内容(ミッション)について
飯山市で夢を実現させたい、自分が主体となって何かに取り組みたい、将来飯山市内において起業、定住したいという意欲がある方を、地域おこし協力隊として募集します。
今回の募集におけるメインのミッションは「温井区での就農」です。そのための活動内容に関しては、応募者と相談の上、決めていきます。
3年間の活動内容については、以下を参考にしてください。
◎農業研修
- 集落内の農家や、飯山市農業研修センターでの農業研修(生産技術、農業機械の操作、経営などを総合的に研修)
◎地域の農産物の販路拡大の研究と実践
- 集落内の農産物直売所の活用
- 農産物の通信販売、ネット販売
- 自分自身の活動内容や、地域の農産物の情報発信(市外に向けてのSNS投稿などのインターネットでの発信。紙のニュースレター発行など)
◎新規就農に向けた活動
- 営農計画の作成
- 農地の情報収集・確保
- 資金・設備等の調達
- 販路の開拓
◎集落のサポート
- 集落内の生産者の、農作業や出荷の手伝い(1日の労働時間内で可能な範囲で)
- 住人との交流や、行事や活動への参加
- 集落内の除雪作業(農業のできない冬期の活動として)
- 集落内の高齢者の見守り(特に冬期)
地域おこし協力隊員 募集要項
地域おこし協力隊に応募するには、現在の居住地、年齢などの条件があります。活動期間は最長で3年間です。
飯山市の地域おこし協力隊は、
・パートタイム会計年度任用職員として、飯山市が雇用する「雇用型」
・飯山市と雇用関係がなく、多様な働き方ができる「委託型」
この2つのスタイルがあります。
応募者が希望する働き方をお伺いしながら、どちらにするかを決めていきます。
地域おこし協力隊への応募条件
次の要件を全て満たす方とします。
(1)飯山市における地域おこし活動等に意欲があり、都市住民の視点やニーズを効果的に生かすことができる方
(2)活動終了後も飯山市に定住する意欲のある方
(3)原則として年齢20歳以上60歳以下(令和6年4月1日現在)
(4)性別・学歴は不問
(5)次のいずれかに該当する方
①過疎、山村、離島、半島等の地域に該当しない区域(3大都市圏等)から飯山市内へ住民票を異動し、生活できる方
②これまで地域おこし協力隊員として一定期間(2年以上)活動し、かつ解職から1年以内である者で、飯山市内へ住民票を異動し、生活できる方
(6)普通自動車運転免許を取得している方
(7)Word、Excel やWEBによる情報発信をはじめとした一般的なパソコン操作ができる方
(8)心身ともに健康で誠実に職務を行うことができる方
(9)地方公務員法第16条の欠格条項に該当しない方
(欠格条項)
第十六条次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。
一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
二 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
三 人事委員会又は公平委員会の委員の職にあつて、第六十条から第六十三条までに規定する罪を犯し、刑に処せられた者
四 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
募集要項の詳細
飯山市サイトに募集に関する詳細資料が掲載されています。応募を検討される方は、こちらもご覧ください。
応募の前に事前相談を行います。お気軽にお問い合わせください
さまざまなミスマッチを防ぐため、応募前の事前相談を実施しています。応募される方と飯山市、温井区の住人がお互いの考えを共有し、応募前に疑問点などを解消します。
事前相談は、対面だけでなくオンラインでも可能です。
また、温井を知るための1日体験プログラムや、地域おこし協力隊インターン制度を利用した、2週間~2か月以内のお試しプログラムの実施も検討中です。
まずはお気軽にお問い合わせください!
地域おこし協力隊に関するお問い合わせ先
長野県 飯山市 事業戦略課 地域協創係
電話:0269-67-0724
メール:senryaku@city.iiyama.nagano.jp
飯山市では令和5年度から地域おこし協力隊募集制度が刷新され、10名以上の協力隊員が活動中です。
すでに活動中の協力隊員や、任期を終えて飯山市に定住したOB・OG、そして事務局(地域協創係)と農林課も、新しく着任した協力隊員の活動をサポートします!
現在活動中の飯山市地域おこし協力隊の紹介
長野県飯山市地域おこし協力隊Facebookページ
取材・撮影:佐々木里恵(里の恵み編集室/元地域おこし協力隊)
写真提供(スイカ畑、スイカ直売会の人物、研修センターで作業中の写真):高梨葉月(地域おこし協力隊)