飯山市新規就農者の情報交換会を開催しました

長野県飯山市では、就農して概ね10年以内の方々にお声がけをし、「新規就農者情報交換会」を実施しました(2024年3月8日開催)。

長谷川正之さんと、新規就農者とのトークセッション

この情報交換会は、新規就農者を支援すること、飯山市内で農業を営む方々が親睦を深めていただことを目的とし、昨年に引き続いて開催されました。

第1部は、企業や行政のマーケティング支援に携わる長谷川正之さんを講師にお迎えし、令和2〜4年に新規就農された3名のパネラーとトークセッションを行いました。

長谷川正之さん 長谷川戦略マーケティング研究所所長 中小企業診断士、公共政策修士
長野県坂城町出身で、長野県や上田市で統一ブランドの創設や農産物マーケティングを推進。令和2年には、飯山農業経営塾塾長としてメイン講師を務めていただきました。

新規就農された3名の方に、まずは自己紹介をしていただきました。

(写真右の方からご紹介)

藤澤隆一さん
飯山市出身。東京で自動車の整備士として働き、令和2年に親元就農。柳原地区で花卉栽培に取り組む


「実家が花卉栽培を専門にしており、父親が引退をしたいということで戻ってきました。シャクヤク、ワレモコウ、ソリダコ、スズランなどを栽培しています。
父親が手掛けていた、突然変異したシャクヤクを世に出したいという思いがあり、取り組みを続けています」

中原貴嗣さん
飯山市出身。飲食関係の仕事を経て、令和4年に親元就農。常盤地区で花卉栽培に取り組む


「藤澤さんと同じく花卉農家です。同じような花を栽培していますが、他所であまり作っていないものとして、オータムライラックという枝物を作っています。
家族経営でやっているので、人手が足りなくて量が増やせない。今後うまく出荷量を伸ばしていければ…という現状です」

阿部秀幸さん
神奈川県横浜市出身。エレベーターのメンテナンス会社に18年間勤務後、妻の実家がある飯山市にIターン。飯山市農業研修センターで2年間学び、令和4年に新規就農。柳原地区で野菜を中心に花卉栽培にも取り組む

「飯山に来て5年目になります。せっかくなら飯山で働きたいと思っていたところ、妻の祖父母の畑とトラクターなどの農機具が残っていて、市の研修や支援制度もあったので、農業をやってみようかと。研修センターでは、1年目は教えてもらった通りに野菜を栽培し、2年目は自分で考えながら作業したことがいい経験になりました。現在はアスパラガス、ズッキーニ、ネギなどを出荷しています。今年で3年目になります。今後は収量を上げていくことが目標です」

「人手が足りない」問題の考え方。先輩農家からのアドバイスも

自己紹介の後、長谷川さんからの質問に、3名のパネラーが答える形式でトークセッションが始まりました。

「いままでやってみて困っていること、悩んでいることなど、正直なところどうですか?」との問いかけに、家族経営で花卉農家を営む藤澤さんと中原さんから「人手が足りない」という課題が挙げられました。

「家族だけでやっているので、収穫しても出荷が間に合わないといったことがあり、効率化の問題を抱えています。うまくやるにはどうしたらいいのか、学ぶ場面を作りたいです」と中原さん。

人手が足りないことや、効率化について、飯山で新規就農して10年目を迎える岡忠農園の岡田さんが、自らの体験を共有してくださいました。

「夫婦二人でやり始めて、限界なところまで来て、4年目に一人雇ったことで、作業効率が倍以上に上がった。人を雇うと人件費がかかりますが、人件費をマイナスには考えない。その人にいくら払うことができたか、それによって売り上げもやっぱり上がりますよ。自分たちに返ってきます」と岡田さん。

現在はさらに多くのスタッフを抱え、何かあっても対応してもらえるので、経営に余裕ができているそうです。農作業をしない冬の間に「人件費を含めた年間計画を立てることが大切!」と、岡田さんは力説していました。

教えてもらったことは、記録して積み重ねることが重要

「経験や知識が浅い新規就農者にとって、ていねいに経験者に教えてもらうことがとても役にたつと思います」と長谷川さん。

「日頃、意識して勉強や情報収集していることがあるか」を、パネラーにお聞きしました。

花卉農家の藤澤さん、中原さんは、農協に花卉部会の青年部があり、そこで先輩方がやりとりする情報に触れたり、市場に行って情報収集をしているとのこと。

阿部さんは野菜の栽培方法について、近所で同じ作物を作っている人の畑に行って声をかけ、こういう時はどうしていますか? 今はどんな作業をしていますか? などと、直接畑で聞くようにしているとのこと。

印象に残ったことなどは、スマートフォンにメモしているそうです。

長谷川さんは「教えてもらったことを記録して積み重ねることはとても重要で、やがてメモが発酵してきます」と語りました。

人がつながることが、農産物の魅力にもなる

親元就農ならではのよもやま話などで盛り上がった後、今後の展望や理想についてお伺いしました。

阿部さん「コロナ禍を経て、ここ1年はようやく地域の方々とも交流が持てるようになり、飯山に来てよかったと思っています。まだ小さい子供たちに、やりたいことをやらせてあげられるように、農業でがんばり、しっかりとした経営を目指したいです」

中原さん「野菜と比べると花卉栽培は特殊で、1年経験しただけでは、どういう要領でやるのか把握することが難しい。最低でも3年以上やってくれる人を増やして、花卉のチームを作ってみんなで生産のベースを上げられるようになっていければ…といったことを思っています」

藤澤さん「ここにいる3人とも、冬は斑尾高原のスキー場で働いているのですが、夏期は逆に、スキー場のスタッフを農家で受け入れできないか? との声をいただいています。
一軒の農家で対応するのは無理ですが、同じような品目を作っている農家でチームを作って、週替わりや日替わり交代で働いてもらうことができないか…というようなことを考えています。それができれは、人手が足りない問題の解決にもなるかもしれないので、実際に行動してみようと考えています」

「仲間でつながりながら地域のために、という視点がいま失われつつありますが、人と人がしっかりつながることが、地域の農産物の魅力にもなっていきます」と、最後にトークセッションの内容を長谷川さんがまとめてくださいました。

続いて第2部は、聴講されていた新規就農者の方々に加え、長野県北信農業農村支援センター、飯山市の農業研修センターの指導員の方々も交え、食事をしながらの情報交換会が開催されました。

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