記録的な猛暑が続いた2023年の夏。ようやく暑さが落ち着いた9月23日(土)秋分の日に、長野県飯山市の瑞穂地区にある「福島棚田」で、毎年恒例の稲刈り体験会が開催されました。その様子をご紹介します。
24年前から続く田植え・稲刈り体験会
福島棚田は江戸時代に拓かれ、一時期は荒廃していましたが、1999年(平成11年)に地域住民の有志により復活し、「日本の棚田百選」にも選定されました。
そのころから始まった田植えと稲刈り体験会は、同じく瑞穂地区にある飯山市立東小学校の体験授業に合わせて開催され、一般の方でも気軽に参加できるイベントです。今年2023年に、24年目を迎えました。
今回はコロナ禍を経て、4年ぶりに一般の方への参加の呼びかけが行われ、参加者の交流会も開催されました。
稲刈りしたお米は小学校の給食に
大型バスに乗ってやってきた40人以上の児童たち。5月に田植えをした棚田では、黄金色の稲穂が揺れています。児童が作ったユニークなかかしが、田んぼのあちこちに立っていました。
開会式では、今年の夏は暑くて雨も少なく、田んぼの水の管理が大変だったことや、今回みんなで稲刈りしたお米は、10月以降に学校の給食で食べられることなどが告げられました。
「がんばって刈りましょう!」校長先生のかけ声で稲刈り開始。
作業は鎌による手刈りで行います。高学年の児童は慣れた手つきで作業をしていました。
上級生と下級生がペアになり、児童たちが助け合いながら稲刈り作業をしている姿があちこちで見られました。
稲のつかみ方に注意!
福島棚田保存会の会長、宮川正一さんから、鎌で稲を刈る際の注意点について説明がありました。
「稲をつかむ手の親指は上向きにしてください。下向きだと、鎌が当たりやすくて危ない」とのこと。
「なるほど」と思いつつ、腰を曲げて稲をつかんだ筆者の親指は、下を向いていてびっくり。いままで危険な状態で鎌を使っていたようです…。
「稲をつかむ手の親指は上向き」とは、こんな感じです。参考にしてください。
はざ掛けして天日干しに
刈った稲は束にして、麻ひもや稲わらで次々としばっていきます。
しばった稲は「はざ掛け」にします。稲の束を二股に分けて竿にかけ、天日干しで乾燥させます。風通しをよくするために、稲はぎゅうぎゅう詰めにしない方がよいそう。
落ち穂拾いもして、無事に稲刈り作業が終了しました。
長野県のおいしい米どころ、飯山ならではとも言える、小学校での米作り体験。子どもたちは、収穫の喜びを味わえたのではないでしょうか。今日のお米が食べられる給食の日が、早く来るといいですね。
福島棚田米や、飯山の郷土料理を味わう交流会
稲刈り後、招待客や参加者、地元の関係者が集まり、親睦を図る交流会が開かれました。
棚田のすぐそばにある「休憩小舎さんべ」の広間に入り、思わず目を引かれたのが、つやつやと輝く福島棚田米の塩むすび!
さっそくいただくと、ほどよくもっちりとした食感と甘みで、具やおかずがなくても、何個も食べられるおいしさでした。
ほかにも野菜の天ぷら、かぼちゃの煮物、鶏の唐揚げ、たっぷり野菜が入った豚汁などがテーブルに所狭しと並んでいました。
県外から参加された方には、飯山の郷土料理「いもなます」と「えご」が注目を集めていました。どちらも、冠婚葬祭や人が集まる席で出されることが多い料理です。
いもなますは、千切りにしたじゃがいもを水にさらしてデンプンを取り除き、酢と砂糖で炒めたもので、シャキッとした食感に意外性があります。
えごは海藻を煮立てて冷やし固めたもの。その昔、越後から運ばれてきた海藻は、山間地の飯山で大変人気があったのだそうです。
おいしい手作り料理の数々に、おもてなしの気持ちが感じられました。
これらの料理を「前日に1日かけて仕込んだ!」とおっしゃるのは、先ほど、鎌の使い方を教えてくださった宮川さん。ご自身でも福島棚田で研究を重ねながら米作りをし、「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」の国際 総合部門にて、2021年(令和3年)から2年連続で特別優秀賞を受賞しています。
みんなで関わり、棚田を守る
福島棚田は2020年(令和2年)に、国の関係府省庁が連携し、棚田を核とした地域振興の支援を行う「指定棚田地域」に指定されました。
山間の傾斜地などにあり、一枚あたりの田んぼが小さくて作業効率がよくないことや、住民の高齢化により維持していくことが難しくなってきている棚田ですが、棚田を守り管理することは、美しい田園の景観を維持し、大雨による洪水や土砂崩れを防ぐ機能を保つことができるそうです。
関東農政局の方々も今回の稲刈り体験に参加され、交流会では福島棚田に関わる人たちと、お互いの立場でこれからも棚田を守っていくことを表明しました。
たくさんの人々の思いによって支えられている福島棚田の美しい景観。そして、一般に流通していないおいしいお米を味わうこともできる、福島棚田の田植え・稲刈り体験会。ぜひ一度、参加してみてください!
体験会イベント情報
福島棚田の田植えと稲刈り体験会イベントの開催については、信州いいやま観光局のサイトやSNSにてご確認いただけます。
(撮影・取材:佐々木里恵)